屋根や雨樋の修理、そして雨漏り。瓦メーカーならではの懇切丁寧な対応を
丸三安田瓦工業株式会社
新潟県阿賀野市保田にある丸三安田瓦工業株式会社は、瓦屋根工事を中心に金属屋根や他屋根材にも対応している屋根工事店です。瓦メーカーでもあり、自社ギャラリーで瓦小物の販売やカフェ、さまざま体験コーナーも行っています。地元の名産「安田瓦」の普及に非常に熱心な会社です。
工事店の想い
PERSON
経営者になり視野が広がった。瓦屋としての仕事の他、伝統の景観を守る活動にも参加
丸三安田瓦工業株式会社(以下、丸三(まるみ)安田瓦工業)は、新潟県阿賀野市保田にある瓦屋根をメインに施工する屋根工事会社です。創業は1980年。瓦製造業を営んでいた親戚と3工場を合併して法人化された会社です。五代目代表取締役の遠藤和人さん(以下、遠藤さん)は、安田瓦協同組合の理事長も務め、伝統ある安田瓦の普及・保存に熱心に取り組んでいます。
丸三安田瓦工業の社名には「丸く三軒、一緒にやっていきましょう」という、親戚3軒が力を合わせていこうと決意した会社で設立当時の気概が込められています。遠藤さんは、生まれた時から常に瓦がそばにある環境で暮らし、職人たちが働く景色を見て育ったそうです。書道八段の腕前を持ち、高校生の時には小説執筆に励むなど、多感な少年時代を新潟県で過ごしました。大学は英文科へ進み、その当時も趣味の小説執筆は続けていたとのこと。畑は違えど、瓦も小説もものづくり。ものづくり精神を愛する遠藤さんに、仕事への想いを伺いました。
「新発田の大学へ進んで、勉強の他には、アルバイトをしたり小説を書いたりしていたかな。今も楽しんでいる趣味のひとつなんですけど、小説の材料になりそうな名所巡りが好きでした。知る人ぞ知るような場所へ行って、あれこれ想像するのが楽しいんですよ」
大学卒業後は、ヘルスケア事業の会社に入社。以前から瓦の仕事を手伝っていましたが建設業界ではなく、就職時に興味を持った業界へ進みました。お父さんからは「30歳までは好きなことをしろ。いずれ帰って会社を継いでほしい」と言われていたそうです。
「医薬品等を取り扱う卸問屋で営業職に就きました。主な営業先は病院なので、ドクターと会えるのは大抵夜なんです。遅くまで仕事をすることが多かったですね。仕事はハードでしたが、歩合制で頑張ればそれだけ収入に反映されたのでやりがいがありました」
会社員として東北各地を転々としながら約7年の勤務。営業職の中堅になってきた頃、遠藤さんのお父さんが亡くなりました。遠藤さんは「いずれは家業へ」というお父さんの言葉を思い出し、区切りをつけるならこのタイミングだと退職を決意したそうです。
「当時、父は丸三安田瓦工業の専務でした。その父が亡くなり、私は他県にずっといたし帰るなら今しかないと思ったんです。ただ、それまで大所帯の会社にいたので、地方の瓦屋での習慣や感覚のギャップに苦労しましたね。最初はちょっとどうしようかなと思うほどで、挨拶や整理整頓の習慣がないことが不安でした」
丸三安田瓦工業に入社後、3年ほどは瓦製造の工場や現場作業に従事しました。医薬品の営業マンだった遠藤さんにとって、大変だったのは職人たちとのコミュニケーションだったといいます。
「皆、良い部分もあるのですが職人気質でしたね。専務だった父の息子が帰ってきたということですごく身構えられていた気がします。そして職人の仕事は習うより慣れろ、とにかく見て覚えろという習慣だったんです。職人は寡黙な人が多いから、自分が知りたいことは職人の手元を見て学んだり、あとは製造した瓦の配達の時に、お客さんの屋根屋さんに「手伝っていいですか?」って聞いて一緒に作業させてもらったりもしました。」
工場と現場を経験した後は、営業職として得意先を回る業務に。しかし、遠藤さんはお父さんが亡くなってから家業に戻ったため、仕事を直接教わることができませんでした。当時は行く先々でお父さんの仕事ぶりと比較され、先人の仕事を引き継ぐ難しさを味わったそうです。
「皆さんの見る目が厳しくて、何をするにもハードルが高くきつかったです。でももう父からは教われないので、自分の得意な分野でお客さまとのコミュニケーションにあてました。例えばネットから情報収集して、こういう例があるとか話題にしたり、よその業界の情報をかみ砕いてわかりやすく説明したり、お客さまが喜びそうな情報提供に努めたりしました。」
そして2018年、遠藤さんは代表取締役に就任しました。通常業務の他、挨拶や整理整頓の習慣を見直して改善し、ごく普通のことを当たり前に遂行してきた数年間だったといいます。また、経営者の会合に参加する機会が増え、視野が広がったり横の繋がりが増えたりしたのも、会社としての強みになったと実感しているそうです。
「今までのお客さまは地域の大工さんや工務店さんだったんですが、全く業種の違う会社さんから屋根工事のお問い合わせをいただくようになりました。弊社には企業理念が2つあるんです。1つは、屋根工事を通じて社会貢献できる会社になること。最近は心無い業者による点検詐欺が横行しているので、地域の皆さまの安心安全を守るのが使命だと思っています。正しい情報を伝えて、必要な屋根工事を届けたいです。もう1つは、町の景観を守ること。一般住宅にはなかなか瓦が採用されにくい時代ですが、神社仏閣等の文化財の仕事をいただく機会があるんですよ。町のシンボルになるような建物の工事を通じて、町の景観維持に貢献する、瓦屋としてそんな会社になれたらいいですね」
そして丸三安田瓦工業は、屋根工事業の実績もさることながら、現代では貴重な瓦製造メーカーでもあります。ものづくりに打ち込む職人としての厳しさも、遠藤さんは感じたそうです。
「瓦づくりは天然の材料が相手です。毎年同じ作業の繰り返しなんですが、奥が深くて変化があります。勘に頼ると言っちゃダメですが、職人の経験と勘が瓦の出来に対するウェイトを占めるんです。今もわからないことの方が多い、それくらい難しい世界ですね。うちは粘土も自前で掘っているので、土の性質を見極めるのが何より大事なんです。製品を均一化させるために、土を寝かす時間、その年の降雨量や降雪量、乾燥後の収縮等、あらゆる条件を考えながら必ず何種類かの粘土をブレンドして、一定のレベルの製品をつくっています」
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WORK
建設業はサービス業。お客さまに手厚く寄り添ってご満足いただける仕事を。人材育成も
新潟県阿賀野市保田の丸三安田瓦工業は、瓦製造のメーカーであり、その他、瓦屋根や金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)の工事も行う屋根工事店です。雨漏り修理や雨樋修理にも対応しています。
「建設業イコールサービス業」
遠藤さんは屋根工事の仕事をこう捉えているそう。仕事をする上で大切なことは建設業イコールサービス業で、お客さまの要望をどこまでくみ取れるかが施工店の器量にかかっています。ただ、建設業界全体の人手不足は深刻な問題であり、瓦葺きも例外ではありません。技術継承には若い人材の確保が欠かせないため、丸三安田瓦工業では職人が気持ち良く働けるよう、様々な福利厚生を備えています。
「建設業イコールサービス業だということをわかってもらえるよう、スタッフの方には教育しています。挨拶や現場管理に対する姿勢で、お客さまの受け止め方は変わります。建設業はサービス業なんだという心構えをもってくれたら嬉しいですね。今は昔と違って『喋らないのが職人』という時代ではありません。しっかりまわりとコミュニケーションを取りながら仕事をする、これが現代のスタイルです。道具は全て会社に揃っていますし、仕事が少なくなる冬場は瓦の専門学校で勉強することもできます。費用は会社負担なので、若い人にはどんどん勉強してもらいたいですね」
遠藤さんが「建設業はサービス業」だと言い切るだけあり、丸三安田瓦工業はお客さまに対する手厚い対応にも定評があります。屋根修理の問い合わせが入ったら、まずは現地での点検を行います。そして不具合箇所を写真に撮り、説明の際にお客さまが見てわかるように準備。その後は写真と資料を元に、丁寧に必要な施工や今後の流れを説明するそうです。
「写真の他、一般的な工事の流れを1枚の紙にまとめてあるので、それらを見せながら屋根をどう直していくかを説明します。必要であれば瓦をめくって下地の状態がどうなっているかもお見せしています。デジカメをご自宅のテレビに繋ぎ、大きな画面で確認するんです。タブレットやスマホを使うと早いんですが、ご年配のお客さまは小さな画面では見にくい方が多いので、大きなテレビを使わせてもらうと便利なんですよ。不具合箇所が一目瞭然なので、説明がしやすいですね」
丸三安田瓦工業では、瓦屋根の他、コロニアルや金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)の施工にも対応しています。しかし、やはり多いのは瓦屋根の相談。この地域は安田瓦だけではなく、セメント瓦の屋根も多く、屋根材に合わせた修理・リフォーム方法を選定します。
「セメント瓦はだいたい30年を超えたら葺き替えの目安ですね。瓦自体だけではなく、野地板のチェックもしっかり行います。直近では築50年の屋根に雨漏りが起きている家を直しました。焼き瓦が載っていたんですが、針金が切れて瓦が全体的にずれている、なかなか大変な状態で。春になると雪と共に瓦も落ちていくおそれがあったので、全面的に葺き替えを行いました。手順としては古い瓦をおろして、野地板を補修後、防水シートを張ってその上に瓦葺きですね。セメント瓦の場合も耐久年数を過ぎていれば、塗装ではなく葺き替えをお勧めしています。」
また、自社で工場を持つ瓦メーカーという強みを活かし、オーダーメイドの鬼瓦をつくることもあるそうです。鬼師と呼ばれる鬼瓦専門の職人がお客さまの要望を形にして、その出来上がった鬼瓦を地瓦に取り付けて窯で焼きます。猫や亀などの動物や座敷童等、色々なモチーフに対応しており、お客さまのこだわりを形にして屋根に残すことが可能です。
そして新潟県阿賀野市の屋根工事の特性についても尋ねました。阿賀野市は積雪の多い地域のため、屋根から外壁面に屋根の雪がせり出す「雪庇(せっぴ)」という状態になり、押し出された雪により雨樋を押し潰してしまう場合があるそうです。雪を避けるために雨樋を外壁から離し過ぎると雨粒が受け止められなくなるため、雨と雪にベストな位置を探ります。
また、屋根の雪止めの設置も欠かせません。積雪の少ない地域では雪止めは軒先に近い1か所に設置しますが、阿賀野市のような積雪が多い地域では、雪の重みが1か所に集中すると瓦が雪と一緒に落下するおそれがあるため、屋根全面に設置して雪の重みを分散させます。
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MESSAGE
屋根から庭仕事まで。「そうだ、丸三に相談しよう」そう思ってもらえる工事店を目指す
丸三安田瓦工業では、ご希望に応じて保証書の発行をしています。また、1年後の点検や定期点検等、お客さまのニーズに合わせて実施しているとのことです。さらに、施工後の万が一の不具合にも迅速に対応しています。
「点検は施工内容やお客さまのご要望に応じて柔軟に対応しています。もう20年以上点検に行っている方もいますしね。年末にカレンダーを持って挨拶に伺うこともありますし、何でも相談してもらえる工事店でありたいと思っています。瓦に限らず、家の困りごと相談も承りますよ。家に何かあったら丸三安田瓦工業に電話しようって思ってもらえたら嬉しいですね。業者間の横の繋がりが強いので、屋根以外の職人さんとの付き合いも多いです。屋根以外が原因の工事でも対応できるので、何かあったらまずは相談してください」
最後に「やねいろは」をご覧になっている、雨漏り修理や屋根の劣化でお困りのお客さま、そして屋根リフォームや屋根修理を検討しているお客さまへメッセージです。
「丸三安田瓦工業の強みは、瓦製造と屋根工事の施工、どちらも自社でやっているということです。製造・施工のノウハウをどちらも持っているので、職人の層も厚いです。彼らはとても気さくなので、現場でも話しやすいと思いますよ。そして、リピートのお客さまが多く、それが嬉しいですね。一度お付き合いが始まると、何度もご依頼をいただくことも多いのですが、それはきっと私たちの仕事ぶりを信頼していただけているからだと自負しています。自社ギャラリーでは催し物をやっていますし、焼き芋を売っているカフェもあります。ぜひコーヒーを飲みがてら遊びにいらしてくださいね。うちには色々な企画を出してくるアイデアマンがいて、その彼女がSNS更新も担当していて面白いんですよ。丸三安田瓦工業から発信する情報が、世の中のお役に立てばと思っているので、フォロアー数日本一の瓦屋を目指します。屋根のこと、住宅のこと、何でも気軽にお問い合わせください」
瓦の製造メーカーということで、遠藤さんの口からは瓦屋根工事以外の興味深いエピソードもぽんぽん飛び出しました。地場産業を活かした町おこしにも精一杯尽力できるのは、本業の製造と工事業に揺るぎない自信があるからなのでしょう。地域を愛する経営者の心意気が、ひしひしと伝わってきた取材でした。
(2025年1月取材)
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取材後記
丸三安田瓦工業株式会社
美しい景観を守りたい
ここ安田地区で生産されている約200年の歴史を持つ瓦、それが安田瓦です。阿賀野市には「やすだ瓦ロード」という瓦を用いたモニュメントが設置された楽しい仕掛け道路や瓦の資料館があります。なんと!その企画が発足したきっかけは、丸三安田瓦工業がつくった瓦づくりのバス停だったそう。「地域の老舗瓦屋が町の活性化を促す」、地方都市にとって、理想的なまちづくりを体現しているその様子を聞き、すごく感激しました。
会社上げての安田瓦愛
遠藤さんに瓦の良さは?と尋ねると、即答で「それを語り出すと1、2時間は欲しいですね」と笑っていたのが印象的でした。町の屋根工事店としての役割の他、丸三安田瓦工業には地域の伝統を守る役割も課せられているようです。しかし、遠藤さんは気負うことなく、それを楽しみながら行っていると感じました。これは、安田瓦への深い愛ですね。ギャラリーでの企画も、スタッフの皆さんの愛と行動力が詰まっていると感じました。
採用にも尽力
休みの確保、有給休暇の取得、研修費用の負担、遠藤さんは働く環境にも気を配っていました。特に休みは何よりも気にしていて、「しっかり休みを取って」と皆に伝えているそうです。さらにホウレンソウの徹底で、誰もが話をしやすい雰囲気づくりも。そのせいか、コミュニケーションで困っていることはないと、遠藤さんは胸を張ります。話をじっくり聞く必要がある時は、できるだけ静かな場所で意見交換ができるよう心掛けているそう。細やかな対応はお客さまだけではなくスタッフにも同様なのですね。
新入社員は初心者も積極的に採用!
新入社員は瓦について何もわからない人が大半。そこで瓦葺きに親しみを持ってもらうために、遠藤さんはまず施工マニュアルのDVDをプレゼントするそう。「瓦葺きってこういう仕事なんだ!」と知る近道になり、とても好評だそうです。さらに、昔の職人のイメージとは違い、現在は気さくな職人が多く、現場での指導は手取り足取り。初めての業界参入でもハードルは低いのではないかということです。伝統の技術を引き継ぐ若者が増えることを、心より応援したいと感じた取材でした!
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工事店プロフィール(丸三安田瓦工業株式会社)
一番の強み |
地域団体商標登録「安田瓦」の製造メーカー及び屋根工事会社。瓦製造・施工両面の技術を活かし、屋根を通じて住まう方の安心・安全に貢献するところ |
会社名 |
丸三安田瓦工業株式会社 |
対応工事 |
|
従業員数 |
社員:34名 |
建設業許可 |
屋根工事業(新潟県知事許可(般―2)第21510号) |
保有資格者 |
一級かわらぶき技能士:5名
二級かわらぶき技能士:2名
瓦屋根診断技士:2名
瓦屋根工事技士:2名
研削砥石の取替え等の業務に係る特別教育:2名
職長安全衛生責任者:1名
石綿取扱作業従事者:3名
足場の組立て等作業主任者:4名
玉掛作業者:8名 |
特徴 |
リフォーム業
瓦屋根工事業
金属屋根工事業
その他屋根工事業
雨樋工事業 |
対応エリア |
東北地方
中部地方
|
アフターフォロー体制 |
三井住友海上の第三者賠償責任保険に加入済です。
1年後の点検や定期点検などもおこなっています。
施工後は主に年末にカレンダーをもってご挨拶にお伺いさせていただきます。
何か不具合などございましたら、迅速に対応致します。 |
やねいろはケア |
未対応 |
代表者 |
遠藤 和人 |
代表者経歴 |
丸三安田瓦工業株式会社 代表取締役
安田瓦協同組合 所属
1987年4月:新潟県立新発田南高校 入学
1989年3月:新潟県立新発田南高校 卒業
1989年4月:敬和学園大学 入学
1993年3月:敬和学園大学 卒業
1993年4月:株式会社バイタルネット 入社
2001年11月:株式会社バイタルネット 退社
2001年12月:丸三安田瓦工業株式会社 入社
2018年6月:丸三安田瓦工業株式会社 代表取締役 就任 |
所在地 |
〒959-2221
新潟県阿賀野市保田6130-1
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|
営業時間 |
毎週月~土曜日、祝日 8:00~18:00 |
定休日 |
日曜日、年末年始休業、大型連休(ゴールデンウィーク)、夏季休業(お盆休み) |
備考 |
2021年1月:安田瓦協同組合 理事長 就任 |