2月下旬の北九州。そろそろ春の訪れを感じ始める頃でしょうか。岡山から参戦した私たちは九州ということで暖かそうなイメージをしていましたが、気温は岡山と同じくらいで、まだダウンジャケットが手放せない気候でした。
さて、やねいろは事務局が毎年参加している技能グランプリ。瓦の「技能グランプリ」は2種類あります。1つは、一般社団法人全日本瓦工事業連盟によって行われる「全瓦連技能グランプリ」。そしてもう1つは、厚生労働省と中央職業能力開発協会、一般社団法人全国技能士会連合会によって行われる「技能グランプリ」で、この2つは毎年交互に開催されています。ただ、2022年と2023年はコロナウイルスの関係で「全瓦連技能グランプリ」が2回続けて開催されることになったため、2つ目で紹介した「技能グランプリ」は2021年以来の開催です。さらに、2021年大会はコロナウイルスの影響で無観客だったため、やねいろは事務局が今回と同じ「技能グランプリ」に参加するのは、なんと2019年の第30回大会以来となるのです!
この大会では、瓦だけでなくその他の建設業・製造業・繊維業など全30職種の競技があり、例えばかわらぶきの横でガラス施工や造園の大会が行われていたり、隣の部屋では紳士服や婦人服の製作なども行われていました。
それでは、ここで「技能グランプリ かわらぶき部門」とはどんな大会なのでしょうか、ご紹介します。
厚生労働省と中央職業能力開発協会、一般社団法人全国技能士会連合会によって行われるこの大会は、全国の選ばれし瓦葺き師たちが、同じ課題をいかに正確に、美しく葺けるかを競うものです。
今回は2024年2月23日(金)にオンラインで開会式、2月24日(土)と25(日)の2日間で合計10時間40分が競技時間です。限られた時間の中で、瓦と必要な資材を用いて瓦葺き職人の腕を発揮します。
今回の課題はどのようなものでしょうか。
競技仕様について見ていきましょう。
それでは、今大会で規定として定められた事項について、今大会で公表された資料から引用します。
【仕様】
1. 使用瓦は三州いぶし瓦 53A 判防災切落桟瓦を使用する。
2. 全ての瓦の納まりは現場作業を想定した施工とし、雨仕舞に配慮すること。
3. 瓦の葺き方は、引掛桟空葺き工法(馴染み土の使用は可)とする。ルーフテープを垂 木通り(隅木ふくむ)に瓦座外面まで使し、瓦座、瓦桟木をその上に留め付ける。
4. 軒瓦は、施工図を参照のうえ、一文字軒瓦と万十軒瓦を使用し、軒瓦の尻部分は銅線 緊結もしくはビス留めとする。
5. 一文字・万十切隅瓦は、左右ともに2箇所を野地よりトンボにて緊結し、互いに結び 合わせる。
6. 軒瓦の出寸法は一文字・万十ともに、瓦座外面から 60~90 ㎜(流れ寸法)とし通りよく納める。なお、計測の位置は瓦座から軒瓦の水垂れ外面までの寸法とする。
7. 桟瓦は全数ビス留めとし、隅の左右勝手瓦に穴をあけ、野地よりトンボにて緊結、又は下地にビスにて留め付ける。定着用に葺土を使用してもよい。
8. 隅巴瓦は、2箇所を野地よりトンボにて緊結する。
9. 隅棟の左右勝手瓦の隙間は、30㎜以内とする。
10. 鬼瓦・柄振鬼の緊結は、#18の銅線を使用し3本を縒状にして野地に緊結する。
11. 隅棟の接点は柄振鬼納めとし柄振台は回し積2段とする。但し2枚の柄振のしは雨仕舞を考慮し横(割線より)に割らず1枚の物を使用して仕上げること。(伏図・立面図及び柄振のし納まり図面参照)
12. 鬼瓦の据付け位置は自由とし、隅棟は割熨斗瓦2段積みに素丸納め、大棟割熨斗瓦は左右均等とし隅棟の素丸瓦を包み込む。
13. 柄振鬼瓦と素丸瓦が接する時は素丸瓦を切り込むか鬼瓦を切り込むかは自由とする。
14. 棟瓦の施工はガイドラインに準じ、D10mmの横鉄筋を通し、取り付けた棟金具1ヶ所に対し#18銅線2本を絡め横筋を留め付ける。(棟断面施工図例参照)
15. 隅棟と陸棟の熨斗瓦は銅線にて互いに緊結する。素丸瓦は横筋に取り付けた銅線にて緊結する。
16. 棟割熨斗瓦の勾配は3寸以上で、チリは勾配で10㎜とする。
17. 棟の台土は、台熨斗瓦より30㎜以上内に納めること。
18. 軒・切隅等外周部の瓦はビスにより、補強止め付けをする。
19. 葺き土は南蛮漆喰(モルロック・白)とし、13袋とする。
20. 瓦を破損した場合は申し出により支給するが、減点の対象とする。
21. 副資材の追加支給はしない。ただし、南蛮漆喰(モルロック・白)の追加は認める。 22. 競技時間を超過した場合は、失格とする。
【注意事項】
1. 合端は、支給の合端台で、室内の競技架台の前ですること。
2. 他人の工具の貸借は禁止する。
3. 副資材として、接着剤・粘着テープを用いることは不可とする。
4. 作業中の水分補給、及びトイレについては制限しない。ただし競技エリア外に出る場合は、競技委員に確認を取る必要がある。また、それにかかる時間は作業時間に含まれる。
【器具工具】
・使用する器具・工具は技能検定使用に準ずる。但し、木工用ノミと電動工具は充電式、電動式インパクトドライバーを使用可とし、充電は所定のコンセントを用いる。
・治具は認めるが横50㎝縦30㎝高さ20㎝の箱の中に入る物とする。(組立て又は連結し て箱の中に入らない物は認めない。)競技委員が認めない治具は使用不可。 尚、使用に際し判断に迷う治具については当日競技委員に判断を仰ぐこと。
【安全作業】
・服装は高所作業を考え、シャツの袖・ズボンの裾を留め、地下足袋等を履き、墜落制止用器具(フルハーネス)・保護帽を着用のこと(保護帽は会場にて支給)。なお、競技委員が安全面から必要と判断した場合(ズボンの裾が長く垂れさがっている等)
は、使用の禁止や着用について指導をする場合がある。
・他人を負傷させたり、本人が怪我をした場合、その状況により失格とすることもある。
・架台は高所作業を想定し、屋根足場をすること。
・状況により、保護メガネを着用すること。
・タオルやバンダナを保護帽の下に汗止め等として使用することは認めないが、保安基準に合致したインナーキャップ等を着用することは可とする。尚、使用に際し判断に迷う場合は、当日競技委員に判断を仰ぐこと。
【協議態度】
・選手は各都道府県の代表として責任ある態度を自覚すること。
・応援団の目に余る指導、アドバイスがある場合には、競技委員協議の上、平等を期すため、本人の競技態度の中で減点の対象とすることがある。
【競技終了】
・競技の終了は、清掃、整理整頓を終え、保護帽、腰袋を外してから、合図を行う。
・ゼッケンは競技終了合図後に外し、競技架台の上に番号が見えるように置くこと。
大会ごとに規定が変わることもあるそうです。指定された仕様や限られた資材を活用し、綺麗に素早く完成することが求められます。
瓦職人には、「かわらぶき技能士」という資格があり、その中で特級、1級、単一等級いずれかの技能検定(国家検定)に合格した技能士が参加できます。逆に、資格を持っている技能士であれば年齢等の制限はなく、各ブロック(エリア)で選ばれた瓦葺き師たちが大会へ出場します。大会参加が決まった選手たちは一般的に、年明け頃から練習を始めます。選手たちは「競技仕様」にもある通り、各エリアや県の代表として職人たちの期待や応援を一身に背負って大会に臨むのです。
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