平昌オリンピック、パラリンピックで日本中が湧いた2018年の冬。
カーリング女子やパシュートの出場選手たちに心打たれた方も多かったのではないでしょうか。
今回の記事を執筆している私も、ミーハー心で観戦をしていましたが、それぞれの選手の表情やまなざしにぐっときてしまうことも多々ありました。
さて、オリンピック熱はそろそろ冷めてきましたが、まだまだ熱が冷めないのが、この「瓦屋根業界」。
2018年3月16日(金)、17日(土)に福岡県で、瓦屋根職人の№1を決める大会「全瓦連技能グランプリ2018九州大会IN福岡」が行われました。
ところで。
「全瓦連技能グランプリ」とはどんな大会なのでしょうか。
こちらの大会は、全日本瓦工事業組合によって行われ、全国の選ばれし瓦葺き師たちが、同じ課題をいかに正確に、美しく葺けるかを競うものです。
例年であれば3日間で10時間前後という制限時間でしたが、今回は2日間で6時間。その中で66枚の瓦と必要な資材を用いて課題となる屋根瓦葺きに挑戦します。
今回の課題はどういったものだったのでしょうか。
競技仕様について見ていきましょう。
それでは、今大会で規定として定められた事項について、今大会で配布された冊子から引用します。
【仕様】
1.仕様瓦は三州いぶし瓦53A判防災切落桟瓦を使用する。
2.全ての瓦の納まりは現場作業を想定した施工とし、雨仕舞に配慮すること。また架台瓦葺き以外の面は板金屋根を想定する。
3.瓦の葺き方は引掛桟空葺き工法(馴染み土の使用は可)とする。ルーフテープを垂木通りに使用し、瓦座、瓦桟木をその上に留め付ける。
4.軒瓦は、施工図を参照のうえ一文字軒瓦と万十軒瓦を使用し、軒瓦の尻部分は銅線緊結もしくはビス留めとする。
5.袖瓦は、尻部2箇所を銅線緊結もしくはビス留めとし、袖拝み部は左右の袖瓦を留めに納める。又、袖瓦下端外面と架台外面までの寸法は左右対称とし、袖瓦の出寸法は納まりは破風板より左右対称とする。
6.巴瓦は、袖瓦上に留めに納め、2箇所を野地よりトンボにて緊結する。
7.軒瓦の出寸法は瓦座外面から60~90mm(流れ寸法)とする。なお、計測の位置は瓦座から軒瓦の水垂れ外面までの寸法とする。
8.桟瓦は全数ビス留めとする。定着用に南蛮漆喰を使用してよい。
9.棟補強金具は38mmビスにて野地に留め付ける。
10.棟熨斗瓦は互いに全数緊結する。棟の台土は台熨斗瓦より30mm以上内側に入れ、桟瓦に触れぬように注意する。割熨斗瓦のチリは勾配で10mmとする。熨斗瓦の勾配は3寸勾配以上とする。素丸瓦は棟芯木よりパッキン付きビスで緊結する。
11.鬼瓦の緊結は、#19の銅線を使用し3本を縒状にして野地に緊結する。
12.軒・袖・角等外周部の瓦はパッキン付きビスにより、補強し野地に留め付けをする。
13.葺き土は南蛮漆喰とし、25kg入り5袋をする。
14.瓦を破損した場合は、申し出により支給するが、減点の対象とする。
15.副資材の追加支給はしない。但し南蛮漆喰の追加が認める。
16.作業時間を超過した場合は、失格とする。
【注意事項】
1.合端は支給の合端台を使用し、各自の競技架台の前ですること。
2.他人の工具の貸借は禁止する。
3.副資材として、接着剤・粘着テープを用いることは不可とする。
【器具工具】
使用する器具・工具は「使用工具一覧」に表記するものとし、電動工具の電源は所定のコンセントを用いる。
治具は認めるが横50cm縦30cm高さ20cmの箱の中に入るものとする。(組み立て又は連結して箱の中に入らない物は認めない。)競技委員が認めない治具は使用不可。
尚、使用に際し判断に迷う治具については当日競技委員に判断を仰ぐこと。
【安全作業】
服装は高所作業を考え、シャツの袖・ズボンの裾を留め、地下足袋を履き、安全帯・ヘルメットを着用のこと。(ヘルメットは会場にて支給)
他人を負傷させたり、本人が怪我をした場合、その状況により失格とすることもある。
【作業態度】
選手は各都道府県の代表を自覚し、競技を行うこと。
応援団の目に余る指導やアドバイスがある場合には競技委員協議の上、平等を期すため選手の作業態度の評価で減点及び失格の対象とすることがある。
【作業終了】
作業終了は、清掃、整理整頓を終え、ヘルメット、安全帯、腰袋を外してから、合図を行う。
いかがでしょうか?
さっぱり分からない・・それが普通です!
ただ、このような大会規定のもとに、全瓦連技能グランプリは開催されているということを知って頂けると嬉しいです。
ちなみに、瓦屋根職人さんは日々仕事をする上で、このような専門性の高い工事を特殊な道具、言葉を用いて行うため、私たちがDIYで良い屋根は葺くことは非常に難易度の高いものだということを実感せざるを得ません。
一般的に、出場選手たちは2~3か月間、このグランプリのために時間を費やし、その際の瓦代などの費用は、所属工事店が選手のために投資すると言われています。
そのため、選手も工事店も力が入るのですが、そんな選手たちを支えるのが、同じ県の組合に所属する、他の工事店の先輩方です。
黙々と練習する選手に付き合ったり、当日は応援団として会場に駆けつけたりと、それぞれの方法で力を注ぎます。(当日、会場にはそれぞれの選手への横断幕も掲げられていますよ。)
周りの工事店の応援が選手を支える、この様子はまさに、オリンピックの選手とコーチ、そして応援団を彷彿とさせますね。
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