1.化粧スレート屋根と雨漏り:はじめに
皆さまは化粧スレートという屋根材をご存知でしょうか?
そんなの聞いたことが無いとおっしゃることが大半だと思いますが、都心部の家の屋根の多くは化粧スレートという屋根材が使われています。
ちなみに、現在出回っている化粧スレートのほぼ100%は「カラーベスト」と呼ばれる商品です。
そんな化粧スレートについて、屋根リフォームなどでよく目にする劣化があります。
それは、化粧スレート屋根のけらば部(屋根の端)において発生する下地の板(以下、野地板)が腐朽している現象です。
化粧スレート屋根のけらば部(屋根の端)
多くの屋根職人さんに聞いてみると、ほぼ全員が「化粧スレート屋根では、けらば部が問題だよ。雨が入っているよ。」と言います。
そこで、屋根職人さんだけが知っている屋根の実態、「化粧スレート屋根のけらば部からの雨水浸入」について、その原因と対策をわかりやすくご説明します。
2.化粧スレート屋根と雨漏り:けらば部からの雨水浸入
実際に屋根リフォームで見かけた化粧スレート屋根のけらば部の劣化はこのようなものです。
化粧スレート屋根のけらば部/野地板の腐朽劣化
化粧スレート屋根を葺き替えするとこのような劣化をよく目にします。
この野地板の腐朽は、けらば部からの雨水浸入によるものです。
日常的に雨水浸入が発生し、野地板の高含水率(30%以上)が続くことで、木材が腐朽していきます。
このように野地板が腐朽しますと野地板の強度が低下しますので、屋根材の釘を保持する力が低下します。
結果として、強風時に屋根材が飛散する恐れが高まります。
少し脱線しますが、化粧スレート屋根のリフォームにおいて、金属屋根材をそのまま化粧スレート屋根の上から施工するカバー工法が提案されることもあります。
その場合、野地板がこのように劣化していないことをまず確認してからカバー工法を行うことをお勧めします。
3.化粧スレート屋根と雨漏り:雨水浸入の原因と3つの対策
では、なぜ化粧スレート屋根のけらば部から雨水が浸入するのでしょうか?
化粧スレート屋根のけらば部は、金属製のけらば水切りを使用しています。
このけらば水切りはデザイン(意匠)としての役目に加えて、風や雨が強い時に化粧スレートの間に入った雨を排水する側溝のような機能を持っています。
新築時は、この側溝機能がしっかりと働いているので、雨漏りすることはありません。
しかし、築10年以上経過したスレート屋根をはがしてみるとけらば部には、必ず土ほこりやいろいろな植物の樹種が堆積してしまいます。
けらば水切りに土ほこりや樹種が堆積している様子
このように水切り内に土ほこりが入り込むと化粧スレート屋根材の端部で堆積します。
新築時は化粧スレート屋根材と水切りの間には、雨を流すだけの空間(約2㎜)が確保されているのですが、その空間を土ほこり等で埋めてしまいます。
すると、屋根の上部から流れてきた雨が堆積部でせき止められ、ルーフィング(防水材)上に雨水があふれる(オーバーフローする)ことになります。
ルーフィング上では、スレート屋根を留めている釘が多数、ルーフィングに孔を開けているので、そこからじわじわと野地板に雨水浸入します。
つまり、野地板が劣化する原因は、けらば水切りの中で堆積した土ほこり等により、雨水がせき止められ、オーバーフローするためだと言えます。
では、雨漏りに繋がることを防ぐために化粧スレート屋根に対してどのような対策をすれば良いのでしょうか?
その対策方法はいくつか考えられます。
まず1つ目の対策方法。
化粧スレート屋根材メーカーの施工マニュアルでは、けらば部のみ、ルーフィングを2重貼り(幅500mm)することになっています。
屋根材メーカーもオーバーフローすることは理解しているようで、1つの対策です。
(しかし、建築学会大会では、幅500 mmでは不足しているとの発表もありますので、今後この施工マニュアルも変わっていく可能性もあります)
2つ目の対策方法。
化粧スレート屋根材メーカーの施工マニュアルでは、けらば部で、スレート屋根材と水切りの隙間を充填剤などで隙間を埋める(以下、シーリング)ことを行うこととしています。
これは、けらば部の中に雨が入らないようにする対策です。
しかし、どんなにシーリングしても数年経つとシーリングが劣化し、けらば部に多少の雨が入ってくる可能性が高まります。
そうなると、入った雨水が屋根と水切りの隙間から出るための出口ともなりうる隙間にシーリングがあるため外に出られず(排水できず)、雨水が溜まり雨漏り・雨漏れの原因になりえます。
そのため、多くの屋根職人さんは危険だと感じて、行われていないのが実情です。
最後に3つ目の対策方法。
それは、土ほこり・雨水がそれ以上移動できないように設置されたシール材を水切りの表面に付けたけらば水切り板金を使用することです。
「シール付けらば」として、水切りメーカーから販売されています。
4.化粧スレート屋根と雨漏り:まとめ
シール付けらば(株式会社ハウゼコ)
化粧スレート屋根のけらば部からの雨水浸入に関して、その原因と対策をご紹介しました。
化粧スレート屋根は単品としては、日本一使用されている屋根材とも言われています。
新築時、スレート屋根の価格が比較的リーズナブルであることも人気の理由の1つと言えます。
しかし、築10年以降、けらば部からの雨漏りのリスクがあり、それは家を買ったお施主さま負担での修理となってしまいます。
お施主さまの将来の負担が軽減されるように、あらかじめ、対策してもらうことをお勧めいたします。
(株式会社神清 神谷昭範)
・当社及び記事作成者は、当サイトに掲載されている記事や情報の内容に関しては十分な注意を払っておりますが、それらについての正確性や確実性、安全性、効果や効能などを保証するものではございません。
・当サイトに記載された情報のご利用については、ユーザー自身の責任において行われるものとし、ユーザーが当サイトから入手した情報に基づいて直接的または間接的に被ったいかなる損害について、当社および記事作成者は一切の責任を負いません。
屋根のことで困ったときは
「やねいろは」へご相談ください!
「やねいろは」は当社規定の掲載基準をクリアした、顔が見れる地元の屋根工事店のみ掲載。お客様自身が直接、地元の屋根工事店に依頼が可能です。屋根工事依頼をお考えの方は、ぜひご活用ください。
地元の屋根工事店を探す
あなたの地元の屋根工事店を自分で探せます。気になる工事店があれば、工事店にお問い合わせすることも出来ます。
電話でのお問い合わせ
0120-920-302受付時間9:00~18:00(土日祝日を除く)
屋根トラブルでお急ぎの方や電話でご相談したい方は、上記フリーダイヤルにお気軽にご連絡ください。
※ご利用の際は、
利用規約に同意したものとみなされます。
現在こちらの工事店は、災害地域にある工事店の為、対応にはお時間いただく場合や、状況によっては紹介できないケースがございます。予めご了承ください。
災害専用窓口へ地域から屋根工事店を探す