1.瓦屋根の棟部が落ちてしまう原因:はじめに
皆さまの中には、巨大地震に対して、瓦屋根が弱いとイメージをお持ちではないでしょうか?
そのイメージの元となっている、瓦屋根の地震被害は大きく2つに分類できます。
1つ目は瓦屋根の建物が半壊・倒壊する被害です。
2つ目は瓦屋根の棟部が落ちてしまうというものです。
1つ目の建物に関しては、阪神淡路大震災以降、調査研究が進み、瓦屋根が原因ではなく、建物の強度不足が原因であるとわかってきました。
この部分について、建物の強度を上げること(壁・筋交いを増やすなど)が第一の解決策でありますが、ここでは割愛します。
2つ目の瓦屋根の棟部が落ちてしまう被害は、特定の瓦屋根工法において発生していますので、その原因と対策をわかりやすくご説明します。
2.瓦屋根の棟部が落ちてしまう原因:築30~40年の瓦屋根の旧工法(大回し工法)によるもの
巨大地震で、瓦屋根の棟部が脱落する被害はこのようなものです。
東日本大震災で被害を受けた物件
東日本大震災において、瓦屋根の棟部に被害が多く発生しました。
瓦屋根工事業の全国組織・団体である(一社)全日本瓦工事業連盟では、その被害が発生した建物の特徴を以下と報告しています。
①築30~40年の比較的古い建物
②棟瓦や桟瓦を葺土のみで固定(経年変化で葺土の固定力が低下)
とくに、②は日本瓦屋根で、昔に施工された物件で多くみられました。
写真の物件も同様で、旧工法(のし積みの大回し(おおまわし)工法)と呼ばれているものです。
そこで、大回し工法について、もう少しわかりやすいように図で説明します。
引用:株式会社神清 大回し工法・断面図
大回し工法の特徴は、以下の通りです。
①冠瓦を躯体に留め付けていない。
②左右ののし瓦同士が緊結されていない。
③棟補強金具・鉄筋が入っていない。
④棟際の瓦が緊結されていない。
⑤冠瓦とのし瓦、葺き土が緊結線(銅線)で包まれている。
つまり、ほぼ葺き土の粘着力だけで維持されている工法です。
施工直後、葺き土の粘着力が強いのですが、葺き土が経年で乾燥するとひび割れなどが徐々に発生していきます。
よくある地震(震度5以下)では問題ないのですが、巨大地震の揺れでは建物躯体と棟部分の葺き土がはがれてしまいます。
やがて、建物躯体の揺れに棟部が追随できず、脱落すると考えられていて、葺き土の粘着力だけに頼った工法が脱落を起こす原因だと言えます。
現在では、巨大地震でも脱落しないように、建物躯体と連結する耐震性の高い施工方法(ガイドライン工法)が確立されています。
3.瓦屋根の棟部が落ちてしまう原因:瓦屋根の棟部への対策:ガイドライン工法へのメンテナンス(変更)
新築では、もちろん、耐震性の高いガイドライン工法で施工されています。
何が変わったのでしょうか?
簡単にガイドライン工法のポイントをご紹介しましよう。
引用:株式会社神清 ガイドライン工法・断面図
ガイドライン工法の特徴は、以下の通りです。
①冠瓦が建物躯体に留め付けられている
②左右ののし瓦同士が緊結されている
③棟芯に棟補強金物が入っている
④棟際の瓦が緊結されている
つまり、棟部が一体となり、建物躯体と連結しています。
葺き土の粘着力がなくても、金物で緊結されているので脱落することはありません。
実物大振動実験(※)や東日本大震災などによって、その耐震性が高いことは確認されています。
新築の瓦屋根は耐震性が高いので、ご安心ください。
ここからは、築20年が経過した既存の瓦屋根の場合は大丈夫か?とご心配される方へお伝えいたします。
残念ながら、旧工法の可能性が高く、耐震性は低い瓦屋根だと思われます。
点検・メンテナンスをお勧めいたします。
建築してもらった工務店さん、もしくはお近くの瓦屋根工事店さんにご相談ください。
どこにお願いしていいか?わからない場合は、やねいろは登録の工事店でお探しください。
点検により、旧工法だと判明したら、早めにガイドライン工法で、棟の葺き直しをご検討ください。
4.瓦屋根の棟部が落ちてしまう原因:まとめ
瓦屋根の棟部に関して、巨大地震で倒壊する可能性が高い旧工法の屋根をご紹介しました。
東日本大震災では、大変多くの被害が発生したために、瓦職人不足・材料不足等で、長期間に渡り補修が行われず、ブルーシートで覆われた屋根が続く状況でした。
また、間違った施工や法外な料金を請求する悪徳リフォーム業者が横行し、被害を受けた方も多かったそうです。
他の屋根材は塗装(10年程度)や葺き替え(30年程度)を定期的に行っています。
それと同様に、瓦屋根の棟部について、通常のメンテナンスの一環として、まずは点検されることをお勧めいたします。
旧工法であった場合は、計画を立てて、ガイドライン工法への葺き直しをご検討ください。
(株式会社神清 神谷昭範)
(※)実物大振動実験:阪神・淡路大震災をうけて、独立行政法人 防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター(E-Defense)で行われた、年月を経た住宅の耐震性検証振動台実験。木造住宅の耐震改修を評価する実棟実験で、その屋根はガイドライン工法で施工された瓦屋根であった。結果としては、阪神・淡路大震災の振動を与えても、ガイドライン工法の瓦屋根は崩れることがなく、その耐震性能が高いことが証明された。
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