愛媛で140年の長き信頼。製造も施工も真摯に屋根に向き合う総合瓦屋根店
株式会社菊銀製瓦
愛媛県今治市菊間町の株式会社菊銀製瓦は、瓦の製造と施工を行う創業140年以上の老舗工事店です。金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)工事や雨樋修理は窓口となり対応可能。現在は、愛媛県瓦工事業組合の理事長と日本鬼師の会の会長を務める五代目が会社を取り仕切り、地域のお客さまからの高い評判を得ています。
工事店の想い
PERSON
先代の入院が契機となり後継ぎとしての自覚が芽生え、将来の展望を考えるように
愛媛県今治市菊間市の株式会社菊銀製瓦(以下、菊銀製瓦)は、1879年に創業した瓦の製造も行う地域密着型の瓦屋根工事店です。愛媛県瓦工事業組合の理事長である代表取締役の菊地陽一郎さん(以下、陽一郎さん)にお話を伺いました。
「もう長いこと瓦の会社をやっている家なので、後を継ぐのは自然な流れでした。昔からものを作るのが好きだったし機械を触るのも好きだったので、手伝いも楽しんでやっていましたね。中学生の頃からアルバイトを始めて、入社後もその延長という気持ちだったんですが、転機が訪れたのは父が機械で怪我をして入院した時、当時20歳でした。その時に、それまで経験のなかった見積り作成やお客さま対応を無我夢中で勉強したんです」
携帯もFAXもない時代で、身近に教えてくれる人もいなかったため、大工さんのところや工務店を回って図面を見ながら説明してもらったそう。「あの頃はとにかく走り回っていた」と当時を振り返ります。そうしてアルバイト感覚だった陽一郎さんに責任感が芽生え、2001年には代表取締役に就任、現在に至ります。
「代表になってからは命懸けという感じですよ。お金の段取りも仕事を取って来るのも全部自分の責任ですから。代々続いている会社だから得意先も多いし、自分がしっかり続けていかなければと思っていましたね。もともとうちは瓦の製造だけだったんだけど、それを施工もできるように変えていったのは私の提案からでした。その時はまだ代表ではなかったんですが、製造だけでは今後難しいだろうと考えたためです。その頃から将来代表になることと、その責任の重さを強く感じるようになっていたのかもしれません」
先代から陽一郎さんが引き継いだ菊銀製瓦は、現在では陽一郎さんの4人のお子さんも入社し、家族と他のスタッフ数名で製造と施工を行っています。スタッフ同士が近い関係性なので、円滑にコミュニケーションできるのがメリットだそう。工場長である長男と工事部長である次男の間では、自社製品についての相談もスピーディーに行えます。
「自社の窯で瓦の製造をしているので、特殊な瓦の復元などもできるのがうちの強みの一つです。この辺りは重要伝統的建造物群保存地区というのがあって、指定されている地域は必ず瓦を使うんですよ。行政と一緒に街並み保存に力を入れて取り組んでいます。今は金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)工事に対応している瓦屋が増えているけど、うちは敢えて瓦に特化してやっていますね。鬼瓦(※1)を作る鬼師も自社で娘がやっていますし、特殊な瓦はもう作るところがないので、逆に強みになっていると思います」
鬼師をしているのは娘の黒瀬晴香さん(以下、晴香さん)。晴香さんのメインの仕事は鬼瓦や手作りの飾り瓦ですが、最近では大きな焼き物の額縁など、変わった依頼も増えてきているのだとか。また鬼瓦はオリジナルのデザインだけではなく、復元の依頼も受けているそうです。
瓦屋根の需要が減っている現状について尋ねると、陽一郎さんからは「それでも需要はゼロにはならないと思う」との言葉が。先ほどの街並み保存の取り組みのように、「今後もきっと瓦のプロフェッショナルである自分たちが必要とされる場所があるはず」とのこと。すでに菊銀製瓦で活躍している息子さんたちが後継者となり、引き続き地元に貢献する会社になっていければ、と展望を語ってくれました。
※1 鬼瓦・・・棟(屋根のてっぺん)の端を彩る瓦
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WORK
瓦の良さ・注意点、どちらも知り尽くした専門店だからできる、安心と納得の説明と施工
菊銀製瓦は、愛媛県今治市菊間町に拠点を構える瓦屋根工事店です。一般住宅の瓦屋根の葺き替え、新築工事、また社寺仏閣の屋根修理も行っています。工事部長である次男の菊地敬介さん(以下、敬介さん)に実際の工事について伺いました。
「瓦は長持ちするものですが、建物の周囲の環境によっては経年劣化が進む場合もあります。海沿いと山間部は傷みやすい傾向がありますね。海沿いは塩害で瓦が溶けてしまったり、塩の影響で瓦の重なり部分が薄くなった結果、瓦がずれてくることがあったり。山間部だと要注意なのは冬です。瓦が水分を吸ってそのまま凍って、瓦の表面が割れてしまう凍害が起こりやすいんです。今は塩害や凍害に強い瓦もあるので、該当地域のお客さまには耐候性の高い瓦をお勧めしています」
菊銀製瓦は社寺仏閣の屋根修理も手掛けています。社寺仏閣を施工する上で敬介さんが一番気を付けているのは、雨漏りしない屋根にすること。100年以上長持ちする屋根を目指し、常に何がベストか考えながら施工をしているそうです。
「雨漏り修理の依頼があった際は、まずは目視点検で屋根裏などを確認し染みがないか見ていきます。漏れている場所がわかればその後屋根に上って、雨漏り箇所を特定しますね。谷(※2)板金の穴や、経年劣化で瓦がずれた部分が原因になるケースが多いかな。谷は新しいステンレスのものに換え、瓦はずれや割れだけであれば一部差し替え工事で対応しています」
愛媛県今治市の瓦屋根工事について尋ねました。今治市の屋根は、紐がついたのし瓦(※3)など、細かい飾りがついた瓦が多いのが昔からの特徴だそう。降雪は少なく施工しやすい地域ですが、雨の日は工事ができないため、常に天気予報に注意して施工を進めています。雨の予報があれば、事前に雨養生をして部材が濡れないよう対策しているとのことでした。
またお客さま対応について、代表の陽一郎さんが先代の頃との違いに触れながらお話を聞かせてくれました。
「父の頃はとにかくたくさん家が建っていて本当に忙しくて、競合との価格競争も激しかったから見積りもかなり大雑把だったみたいなんです。でも今は時代が変わりましたから、そういうわけにいきませんよね。大事なのはお客さまがしっかり納得した上で施工すること。だから見積りは細かく、どこにどんな部材を使うのかまで書いて説明しています。そういうところは代替わりしてから変えていきました。施工の途中でも、どこまで終わったかの報告もしていますよ。お客さまが納得して気持ちよく工事を終えられるよう心掛けていますね」
瓦は長持ちするためリピーターは少ないのではないかと尋ねると、「しっかり施工して良い印象で工事を終えていれば、お客さまは意外と覚えていてくれて、20年以上経ってからでも連絡をくれるんですよ」と陽一郎さん。依頼のサイクルは長くてもリピーターがいるというのは、瓦店として信頼されている証です。140年以上もの長い間、地域で真面目に仕事をして、代々築き上げてきたイメージがあるからではないかと陽一郎さんは自信を覗かせていました。
※2 谷・・・水が流れる排水機能を持つがゆえに、屋根で最も雨漏りがしやすい部位
※3 のし瓦・・・壁とのつなぎ目や冠瓦(屋根の登頂部分)とのつなぎ目に使う平板の瓦
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MESSAGE
「愛媛県の瓦に関しては菊銀瓦」と思ってもらえるような会社であり続けたい
お客さまとの打ち合わせは、代表の陽一郎さん、または工事部長の敬介さんが担当するそう。その際に敬介さんが気を付けているのは、お客さまへの工事内容の伝え方です。瓦の名称など専門用語はお客さまにはわかりにくいため、なるべく簡単な言葉に言い換えてお客さまが理解しやすいように話しているとのことでした。また敬介さんは、工事部長としての自分の仕事は「いかにきれいに納めるか」だと言います。お客さまの要望をすくい上げながらも、いかにしっかり納めて雨漏りしない屋根にするかを考え、どうすれば建物が長持ちするかをプロの視点で提案するよう心掛けていると教えてくれました。
取材の終盤、菊銀製瓦の一番のアピールポイントについて伺うと、代表の陽一郎さんはこんな話をしてくれました。
「自社にある窯で瓦の製造をしていて、施工も自社で行っているということと、しっかりと後継者がいて、今後も続けていく予定だということがアピールポイントですね。この業界も職人が高齢化しているので、今いる瓦屋さんも自分の代で終わりにするとか、今後のメンテナンスはできないというところが多いんです。瓦の需要が減っていると言っても、現実問題、今ある瓦の修理は発生するわけだから、若い世代がいる工事店というのは強みだと思います。将来的にも安心して相談できる専門店としてやっていきたいですね」
最後に「やねいろは」をご覧になっている瓦屋根の劣化でお困りのお客さま、雨漏り修理・雨樋修理などの屋根リフォーム・屋根修理を検討しているお客さまへメッセージです。
「お客さまが安心して暮らせるように、製造も施工も、きちっとした仕事を責任持って行っています。完工後は保証書の発行も可能ですし、心配事があればすぐに駆け付けるので安心して何でもご相談ください。お問合せ、お待ちしています」
菊間町で一世紀半近くもの長い間、瓦屋をやっている菊銀製瓦。取材で先代、五代目、入社したお子さんなど様々な人のお話を聞いて、それぞれの時代でたゆまぬ努力があったからこそ、信頼され続ける老舗の瓦店になれたのだと感じました。
(2023年12月取材)
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取材後記
株式会社菊銀製瓦
鬼師を継いだ後に祖父の偉大さを知った
陽一郎さんの4人のお子さんのお一人である鬼師の晴香さんは、先代が鬼師として作った作品を見て育ちました。小さい頃からものづくりが好きだった晴香さんは自然と鬼師を目指すようになりますが、先代は晴香さんを褒めることはおろか、仕事を教えることも、先代の仕事を間近で見させることもほとんどしなかったそう。「だから鬼作りはほぼ独学で覚えました。祖父には怒られてばかりで怖かったけど、引退後に少しだけ教えてもらう機会があって、その時は感動しました。やっぱり祖父の作る鬼はすごいと実感しましたね」と貴重な思い出を語ってくれました。
頼もしい4人の後継者
家業を代々継承している家では、後継者である子どもがその道に向いているか、やりたいかどうかが、家業が続くかどうかに大きく関わってきます。やりたくなかったけど渋々…なんていう話を耳にすることもありますが、菊銀製瓦の4人のお子さんは自分の意志で瓦の道を選び、いきいきと仕事をしているのが印象的でした。兄弟仲も良いそうなので、陽一郎さんも安心して将来を任せられるのではないかと思った取材でした!
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工事店プロフィール(株式会社菊銀製瓦)
一番の強み |
瓦の自社製造と自社施工が可能な老舗の総合瓦取扱店であり、次世代を担う若手も育っているところ |
会社名 |
株式会社菊銀製瓦 |
対応工事 |
|
従業員数 |
社員:8名 |
建設業許可 |
屋根工事業(愛媛県知事許可(般―2)第9968号) |
保有資格者 |
一級かわらぶき技能士:2名
二級かわらぶき技能士:1名
二級建築施工管理技士:1名
瓦屋根診断技士:3名
瓦屋根工事技士:3名
巻上げ機運転者:1名
研削砥石の取替え等の業務に係る特別教育:1名
職長安全衛生責任者:2名
玉掛作業者:3名
ものづくりマイスター(かわらぶき):1名 |
特徴 |
リフォーム業
瓦屋根工事業
その他屋根工事業 |
対応エリア |
四国地方
|
アフターフォロー体制 |
ご要望に応じて保証書を発行します。
気になるところがあればお気軽にご連絡ください。 |
やねいろはケア |
未対応 |
代表者 |
菊地 陽一郎 |
代表者経歴 |
株式会社菊銀製瓦 代表取締役
越智商工会 所属
日本鬼師の会 所属
1979年3月:菊間町立菊間中学校 卒業
1979年4月:新田高等学校 入学
1981年8月:新田高等学校 中退
1981年9月:株式会社菊銀製瓦 入社
2001年9月:株式会社菊銀製瓦 代表取締役社長 就任 |
所在地 |
〒799-2303
愛媛県今治市菊間町浜32-2
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|
営業時間 |
毎週月~土曜日、祝日 8:00~17:00 |
定休日 |
日曜日、年末年始休業、大型連休(ゴールデンウィーク)、夏季休業(お盆休み) |
備考 |
2019年3月:えひめ伝統工芸士 認定 |