お客さまのご要望第一の屋根工事。一人親方の強みは柔軟な思考と対応にあり
須藤瓦店
群馬県高崎市吉井町の須藤瓦店は、瓦屋根や金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)の工事を中心に施工する屋根工事店です。その他屋根材や屋上防水等に関する工事は窓口となって対応可能。瓦を愛し、面白がり、瓦屋根工事にとことん情熱を注ぐ職人が美しく丈夫な屋根に仕上げます。
工事店の想い
PERSON
瓦と共に育ち、自然と職人の世界へ。お客さまのニーズに伝統の技術を存分に活かしたい
須藤瓦店(すとうかわらてん)は群馬県高崎市吉井町に拠点を構える屋根工事店です。瓦屋根工事をメインに手掛け、金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)やスレート、雨樋(あまどい)修理にも協力工事店と共に幅広く対応しています。代表の須藤和昭さん(以下、須藤さん)は「ぐんまの名工」を受賞した確固たる技術を持った職人で、さらに群馬県屋根瓦工事組合連合会の技能士会長を務め、過去には組合の青年部発足から所属していた地域に根差した仕事人でもあります。
須藤瓦店の創業は1968年。須藤さんのお父さんが裸一貫で始めた工事店です。自宅の敷地に物置を建て瓦を積み、瓦葺きの仕事を始めました。須藤さんは忙しく働くお父さんの背中を見ながら、瓦と共に生活をしてきたそうです。
「物心ついた時から瓦がそばにありました。昔は南蛮漆喰やモルタルがなくて葺き土(※1)に泥を練ったものを使ってたので庭に粘土の山があってね。そこでミニカーを走らせて遊んでいて、あとから粘土の中からミニカーが出てきて怒られたりしていました」
取材では終始このように朗らかな受け答えで場を和ませてくれましたが、意外にも子どもの頃はおとなしく、クラスの中で目立たないようにひっそり過ごしていたといいます。工業高校の電気科へ進学して友人と楽しく過ごし、青春時代を謳歌しました。
高校卒業後は愛知県の屋根工事店で修業をしながら瓦葺きの職業訓練校へ通いました。すぐに瓦の世界へ入ったのは、幼い頃から家業を継承してほしいというまわりの雰囲気を感じていたから。さらに須藤さんが高校卒業の頃は、日本がバブル景気に沸く直前で高校生の就職率が一時的に下がっていた時代だったため、確実に就職できる瓦葺き職人の道を自ら選択したといいます。
須藤さんは1年間の通学、そして2年間の工事店での修業を終え、1989年に須藤瓦店へ入りました。一般住宅や寺など様々な現場を知り、個性豊かな職人たちの考えに触れた影響で神社仏閣の屋根にも興味を持って幅広い技術と知識を身に付けました。そして2009年に先代から代表を引き継ぎ、仕事に堅実に向き合い信用を築いてきました。
「有難いことにお問い合わせをたくさんいただき仕事は順調です。大きな災害があって仕事が突発的に増えることはありますが、新築需要の減少もあり今後は仕事量が減っていくと思うので、仕事のやり方を見直して時代のニーズに合うようにしていかなければいけませんね」
ひと昔前、大工や屋根職人は高いプライドを持ち、その気概のまま周囲へ接していたといいます。接客態度に難ありでも腕が確かなら仕事ができた時代がありましたが、今はそれではいけないと須藤さんは考えているのです。
「瓦職人や大工が『俺の思った通りにやればいい』という勢いを持っていた時代がありました。でもそれはもう今の時代には合いません。以前、1階と2階で違う色の瓦を葺いたんですが、おそらく私の親世代の職人だと受け入れ難いやり方です。でもそれは2階の部屋の暑さを改善したいというお客さまのニーズで、それに柔軟に応えることができるのが自分たち世代の職人のいいところですね。今後、きっかけがあれば若い人を育てたいです。伝統技術を引き継ぎ、今の時代に合う対応力を身に付けさせる、それが先輩たちから受けた恩を返すってことだと思います」
※1 葺き土・・・瓦を固定する材料
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WORK
一般住宅から文化財まで様々な瓦屋根のオーダーに応えられる柔軟かつ高い技術
群馬県高崎市吉井町の須藤瓦店のメイン事業は、瓦屋根の新築工事やリフォーム工事です。その他、金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)やスレート屋根、雨樋修理も可能で、屋根のお困りごとに幅広く対応しています。
須藤瓦店の強みは、現地調査から施工まで全ての工程に須藤さんの目が光っているため、工事に対する判断が迅速であること。更に、特殊なリクエストにも、職人同士のネットワークを活かしてお客さまの最大限の満足に繋げます。
「お客さまの要望にできる限り応える、それが第一です。私1人でやっている工事店なので現場での判断が早く、話がスムーズに進むと思います。以前、築100年以上経っている屋根の葺き替えの際に、お客さまが既存の鬼瓦を使いたいとおっしゃったんですよ。でも100年経った鬼瓦は焼き直しても欠ける可能性が高いので、それを説明して復元で鬼瓦を作ったことがあります。仲間に鬼瓦をつくる鬼師がいるので焼いてもらったら、お客さまが大変喜んでくださいました」
その築100年以上の住宅は、市の文化財になるほどの由緒ある建物でした。職人魂がうずいた須藤さんは通常の葺き替え工事の他、既存の瓦と同じものを特注で焼いて用意する完全復元の施工も見積り提案したそうです。
「市の文化財とはいえ、お客さまの費用負担もあるので完全復元の見積りは通らなかったんですが、鬼瓦は特注で作り大変ご満足いただけました。紐のし瓦(※2)を使う土葺き(※3)での施工で、まず屋根勾配にしたがって架かっている垂木だけの状態にして下地材である野地板を張り替えました。古い屋根なので経年劣化で垂木が下がっていたり、屋根の高さが揃っていなかったりしたので、下地の高さ調整に苦労しました。高い部分は垂木の押さえている部分を削ってできる限り調整するんですが、それでも完全に揃えるのは難しいんです。野地板の状態で瓦をひっかけてビスで留める引掛け桟で高さを調整して、屋根を平らに整えてから葺き替えをしました」
また、須藤さんのもとには雨漏り修理の相談も寄せられます。瓦屋根の雨漏りの原因は経年劣化による瓦のズレや傷みが大半であり、傷みが原因の場合は部分修理か全体葺き替えか職人として悩ましく思うことがあるそうです。その場合、長年の経験から必要だと判断した施工方法を選び、3種類ほどの見積りを用意します。
「寄棟(※4)の斜めに切った瓦の納め方が悪くて、それが経年でズレたり下地が傷んだりして雨漏りを起こしているのが多いですね。部分的な雨漏り修理で済めばそれでOKですが、全体的に傷んでいると棟(※5)の積み直しをしても平部がもたないので、何通りかの施工例を挙げて見積りを出すこともあります。屋根の経年劣化と共に雨樋修理や交換も必要なんですが、雨樋で大変なのは瓦屋根から金属屋根に葺き替えた直後で、新しい板金は水はじきが良く雨水が雨樋を飛び越えてしまうんです。しばらくすると落ち着くんですが、お客さまからすると『直したのになんで飛び出すの』となりますよね。それなら雨樋の位置を高くすれば解決するかというと、雪が降ると引っかかるので、職人としてジレンマがある事例です。だからこそお客さまが不安にならないようにしっかりとした説明を心掛けています」
群馬県の屋根工事の特性について尋ねました。須藤瓦店がある高崎市は県内でも積雪の少ない地域ですが、県内北部はそれなりに積もります。積雪がある地域の瓦屋根はすが漏りへの対策が必須です。また夏の気温の高さも全国的に有名で、さらに冬は日本海側で大雪になると、湿気を失った乾いた風が太平洋側へ向かう際に強風となって群馬県へ吹きおろし、瓦屋根に大きな影響を与えます。
「積雪がある地域は、瓦と瓦の間に水が入り込む前提で瓦を葺かなければいけません。瓦と瓦の間に雪が入り昼間にとけて夜にまた凍る、それを繰り返すと表面張力で瓦の内側に水が吸い込まれて屋根の内側に水が溜まります。そしてその水があふれて雨漏りになる。それをすが漏りといいます。その吸い込みが起きないように葺くのが難しいですね。そして夏の暑さと冬のからっ風『赤城おろし』も有名で、銅線で据え付けてある鬼瓦が倒れるほど強い風になることもあります」
※2 紐のし瓦・・・瓦の繋ぎ目を覆う「紐」と呼ばれる突起が付いている熨斗(のし)瓦の一種
※3 土葺き・・・土や粘土を用いて屋根瓦を固定する工法
※4 寄棟・・・屋根面が4方向に傾斜する屋根形式
※5 棟・・・屋根が交差して山型になったその部分。または、屋根の頂上にある水平な部位
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MESSAGE
高い技術と小回りがきくフットワーク。お客さまの喜びを最大限に引き出す屋根工事を
須藤瓦店の施工後のアフターフォローは臨機応変です。完工後、万が一お客さまが不具合を発見した場合にはすぐに点検に伺っています。
「施工はやり損じのないよう入念にチェックしていますが、工事が終わった後に万が一気になることが出てきたらすぐに連絡をしてください。点検して最善の対応策を考えます」
最後に「やねいろは」をご覧になっている、屋根の劣化でお困りのお客さま、そして屋根リフォームや屋根修理を検討しているお客さまへメッセージです。
「私ひとりでやっているので、小回りがきくのが須藤瓦店の強みですね。現場での急なリクエストにも柔軟に対応でき、工事がスムーズに進められると思います。これまで積み重ねてきた知識と経験を総動員させてお客さまの満足いく完成に仕上げますので、屋根リフォームや修理で気になることやわからないことがあれば気軽に相談してくださいね」
瓦が好きで、常に瓦のことを考えているという須藤さん。難しいリクエストであればあるほど、お客さまのためにどうにかしなければという気持ちが強くなるそうです。瓦自体はオリジナル要素が強いですが、屋根のデザインや葺き方はオーダーのしがいがある屋根材。須藤瓦店ならお客さまが楽しみながら屋根づくりができる、そう実感した取材でした。
(2023年12月取材)
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取材後記
須藤瓦店
職人はマニアであれ
「鬼瓦カタログで使う鬼を決めてもらったら、お客さまが『家族会議をしたの久しぶり』ですとおっしゃってね」と嬉しそうに話していた須藤さん。鬼瓦だけのカタログ……?と、私たち取材班も聴き慣れない言葉が出て、須藤さんがいかに瓦に精通しているかがわかりました。好きな瓦は?のマニアックな質問に「やっぱり見ていて面白いのは鬼瓦です。瓦屋根はオーダーメイドの世界なのでオプションも無限です」と即答。本当に瓦仕事を楽しんでいる人だと感じました。
須藤さんにとって瓦は趣味!
趣味という言葉も聞き逃せません。お客さまからオリジナルで鬼瓦をつくりたいと言われると内心「やったー!」と思いながら鬼師さんのもとへ案内するそう。カタログから選べば話が早いのにわざわざ手のかかる工程を喜ぶのは、仕事に対する打算的な考えが薄いから。若い頃は工夫を凝らしたご自身の車のオーディオが車用品メーカーの目に留まり取材を受けたこともあり、ものごとに趣向を凝らす姿勢は筋金入り。自身のこだわりをうまく仕事へ反映し、そして昇華!須藤さんは、職人になるべくしてなった人でした。
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工事店プロフィール(須藤瓦店)
一番の強み |
幅広い瓦の知識を持った代表がお客様のニーズを受け入れて柔軟に対応し施工をおこなうことろ |
会社名 |
須藤瓦店 |
対応工事 |
|
従業員数 |
社員:1名 |
保有資格者 |
一級かわらぶき技能士:1名
瓦屋根診断技士:1名
瓦屋根工事技士:1名
巻上げ機運転者:1名
職長安全衛生責任者:1名
石綿取扱作業従事者:1名
足場の組立て等作業主任者:1名
玉掛作業者:1名
ものづくりマイスター(かわらぶき):1名
職業訓練指導員:1名 |
特徴 |
リフォーム業
瓦屋根工事業
金属屋根工事業
その他屋根工事業
雨樋工事業 |
対応エリア |
関東地方
|
アフターフォロー体制 |
あいおいニッセイ同和損保の第三者賠償責任保険に加入済です。
何か不具合などございましたら迅速に対応致します。 |
やねいろはケア |
未対応 |
代表者 |
須藤 和昭 |
代表者経歴 |
須藤瓦店 代表
1984年3月:吉井町立入野中学校 卒業
1984年4月:群馬県立高崎工業高等学校 入学
1987年3月:群馬県立高崎工業高等学校 卒業
1987年4月:株式会社坪井利三郎商店 入社
1987年4月:愛知県瓦高等職業訓練校 入学
1988年3月:愛知県瓦高等職業訓練校 卒業
1989年3月:株式会社坪井利三郎商店 退社
1989年4月:須藤瓦店 入社
2009年4月:須藤瓦店 代表 就任 |
所在地 |
〒370-2104
群馬県高崎市吉井町馬庭274
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|
営業時間 |
毎週月~土曜日 8:00~18:00 |
定休日 |
日曜日、祝日、年末年始休業、大型連休(ゴールデンウィーク)、夏季休業(お盆休み) |
備考 |
2018年9月:群馬県優秀技能者表彰(ぐんまの名工) 受賞 |