伝統を守り未来を築く。瓦葺きに加え新たな屋根・外装工事対応への挑戦も
有限会社野村瓦店
茨城県下妻市鯨の有限会社野村瓦店は、瓦屋根と金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)の工事を中心に住宅外装工事全般を行う工事店です。瓦の伝統技術はもちろん、時代のニーズに合わせた技術も積極的に取得し、協力店と連携を取りながら地域のお客さまの住宅の悩みごとを解決します。
工事店の想い
PERSON
ものづくりの面白さを知り瓦職人に。今後は伝統技術を守りながら、新しい技術にも挑戦を
有限会社野村瓦店(以下、野村瓦店)は茨城県下妻市鯨に拠点を構える屋根工事店です。創業は1930年頃で、関東大震災の爪痕残る時代に瓦を焼く窯元からスタートしました。代表取締役の野村尚仁さん(以下、野村さん)はこの会社の四代目経営者です。ひいおじいさんの時代から続く会社を背負う野村さんに、仕事への想いを伺いました。
「祖父から聞いた話では、関東大震災後の住宅工事の混乱の中で瓦を売りにくるブローカーを見て、曾祖父が『瓦転売をブローカーがやっているなら、自社でちゃんとした形で瓦販売をやった方が社会的に良いのではないか』と窯元をやり始めたそうです。で、それを見ていた私の父が時代の流れを感じ取って、これからは瓦を作るだけでもダメだと屋根工事も始めました。法人化したのは1992年なので、そこからは30年以上工事業をしっかりやっていっていますね」
瓦を見て育った野村さんに、幼い頃から家業を継ぐのを意識していましたか?と尋ねると「正直言うと継ぎたくはなかったですね。あ、そう言ってはダメかもですね」と楽しそうに昔を振り返ってくれました。野村さんはこの道20年以上のベテラン職人でしかも経営者。「継ぎたくなかった」という後ろ向きな姿勢のままで簡単に決断できることではありません。継ごうと決めたきっかけは一体いつだったのでしょうか。
「設計士になりたい気持ちもあったんですが、職人になるんだって気持ちが芽生えたのは高校生になって現場を手伝った時ですね。そこで初めて、瓦葺き……ものづくりって本当は面白いんだと思いました。屋根の道へ進むと決めたのは高2か高3の夏かな。高所作業で危険で怖かったですが、それよりも作業の楽しさが勝ったのをよく覚えています」
高校卒業後は修業のために愛知県の瓦学校へ進みました。全国から若い職人が集まる学校で、その時に一緒に修業した仲間との繋がりは今も強く、都度情報交換をしています。2024年1月の能登半島地震の際にも、同期と連絡を取り合って現地の様子を聞いたそう。
「地震と水害で北陸は本当に大変な年です。私たちには東日本大震災での経験があるので、石川県にいる同期職人とすぐに情報交換をしました。同期は全部で20人くらいかな。ほとんどが経営者の卵で私と同じ境遇、そして同じ修業をするわけですから、同期とはすぐに仲良くなりました」
2年の修業期間を終えて瓦学校を卒業し、2003年に晴れて野村瓦店へ入社。ベテランの職人について仕事をさらに教わり、基礎から応用へと腕を磨きました。瓦学校の2年間よりも、家業へ戻ってからの2年がいちばん勉強した時期ではないかと、野村さんは当時を振り返ります。
「野村瓦店としての仕事がわかるようになるまでの2年間、言われたことを丁寧にできるように必死でした。良かったのは父から離れて別の職人さんについたことですね。親子だときっとけんかになってしまいますし。父も私が一人前になるまではその方に任せようと決めていたんだと思います」
そうして2018年、先代から経営を引き継ぎ代表取締役へ就任しました。野村さんの代になり大きく変わったのは金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)の工事も手掛けるようになったこと。瓦屋根専門の工事店は減少傾向にありますが、それこそがチャンスではないかと野村さんは考えているのです。
「一般住宅はもちろん社寺仏閣もできて、板金もできて、そして昔ながらの瓦葺きの高い技術も持っている。総合的に見て、こんな強い会社はないんじゃないかって思っています。板金をやるようになった時、瓦がつかない屋号に変えようか悩んだんですよ。でも祖父がつくった会社というのが大きかった。自分の一存では簡単に変えるってことができませんでした。なので屋根全般何でも工事しますが、今も野村瓦店と名乗っています。最近は建物の外まわり全て施工できる体制になってきて、少しずつ住宅工事店としての枝葉が伸びてきたかなという感覚ですね」
板金屋さんや塗装屋さんの技術、そして野村瓦店の屋根工事技術、野村さんが言う「枝葉」は、三者三様の技術がネットワークとして繋がってきたことを指します。屋根だけではなく、建物外装全てを網羅できる施工体制が着々と広がっているのです。
「例えばですが、いずれは仲間の技術が繋がって住宅一棟を建てられるくらいの技術が持てたら最高ですね。今はまだ体制的に二分咲きが三分咲きくらいなので、これからもっと色んな方々と繋がっていきたいと思います」
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WORK
お客さまのニーズは様々。打ち合わせ後、お客さまを安心させているのが本当のプロ
茨城県下妻市鯨の野村瓦店は、瓦屋根・金属屋根の工事を中心に行う住宅工事店です。雨樋修理、そしてリフォーム工事のカバー工法にも対応可能。お客さまへのヒアリングを重視し、ご希望通りの工事を目指します。
野村瓦店がお客さまに対して大切にしているのは、ファーストコンタクト。初めての打ち合わせには必ず野村さんがお客さまの元へ行き挨拶をしているそう。そこでお客さまが何を望んでいるかしっかりヒアリングして、工事を提案します。
「ファーストコンタクトは私が行く。これは私が代表取締役になる時に決めたことなんです。挨拶や身だしなみ、お客さまが抱く第一印象はとても大事で、初回の対応で仕事が決まるか決まらないかが変わると思っています。見積りや現地調査、初動の早さも心掛けています。リフォームの訪問販売業者は、最初にお客さまの不安を煽ってくるんですよ。屋根のあの部分崩れている、どうしますか危険ですよってね。でも本当のプロは『こうすれば解消しますよ』とお客さまに無理のない工事や適正価格の見積りを提案します。必要のない工事はしないし、お客さまを安心させてから帰るものなんです」
野村瓦店では新築工事、リフォーム工事のどちらにも対応しています。そして野村瓦店の最大の強みは、現場に出る社員が「一級技能士(国家資格)」の資格を取得していることです。
「瓦には平板と和瓦があります。平板は技術に大きな差が出ないものなんですよ。でも、和形瓦には経験と場数が出ます。和瓦の良さを最大限に引き出し、雨水が滞らない水の道筋を作れるのは和瓦技術の高い職人です」
最近はリフォーム工事の割合が多く、葺き替えからカバー工法まであらゆるパターンの工事を引き受けています。全葺き替えや部分修理、また屋根リフォーム工事と外壁塗装を同時に施工することもあり、そういった場合は足場工事から屋根工事、外壁塗装の順でスムーズに進められるよう協力工事店と連携で工程を決めます。
「全葺き替えができれば屋根が見違えます。でもご予算の都合でできない場合もありますよね。複雑な部分修理ができるのは、私たちに経験と実績があるからです。茨城は比較的棟の段数が高くて、15段なんて家もあります。最近は地震対策で瓦屋根の棟の段数を低くしてほしいというご要望が多いかな。ただ、それは30~40年ノーメンテナンスの瓦屋根ですね。新築15年から20年の平板瓦はそう簡単には落ちないですし、たとえ30年だったとしても、きちんと棟の取り直しのメンテナンスをしている屋根は地震で簡単に壊れないものです」
また、カバー工法もリクエストの多い工事です。古い屋根材はアスベストを含むものがあり剥がすとアスベストの飛散が起こるため、その場合は古い屋根材を剥がさずカバー工法でリフォーム工事を行います。
「アスベストを含む屋根材にカバー工法をする際は周辺への飛散に気を付けています。何もしなければアスベストは無害なんですが、ドリルで割ったり切ったりした時の粉塵が有害なので基本的に切らない・割らない工程で進めていきます」
さらに経年劣化による雨漏りのトラブルも多く、野村瓦店には様々な問い合わせが寄せられます。野村さんが雨漏り修理に対して気を付けているのは、程度の大小に関係なく早めに現場へ行くこと。水漏れを起こしている場合は、優先順位を上げて対応します。
「ゲリラ豪雨とか雷とか、時間のタイミングもありますが、早急な対応を心掛けています。現場を調査すると、おそらくこれが原因だろうというのがわかるケースが多いです。今年(2024年)の茨城は落雷が多く、そこから雨漏りしているのも見ましたね。雷は外壁ではなくまず屋根に落ちるんです。瓦に当たるとそこだけ爆発したように割れてしまうので、しばらくしてその破損部分から雨漏りします。その他は台風等の横殴りの雨による吹き込みですね。瓦だけではなく、サッシのコーキングの切れ目にも雨水が入り込みます。屋根、外壁、いずれの雨漏り修理も協力工事店と共に施工が可能なので、ご安心くださいね」
その他、屋根に特化した雨漏り原因は谷板金の劣化です。銅板を使用した谷は劣化により穴が生じやすく、そこから雨漏りを起こしている場合が多いそう。ひと昔前、銅板の谷は色の変化が美しく丈夫、末代までもつと言われ多用されていました。近年では銅板は劣化で穴が空きやすいことがわかっているため、谷板金にはガルバリウム鋼板やステンレスが主流になっています。銅板に限らず、全ての谷板金の穴はコーキングでの応急処置も可能ですが、劣化した板金はいずれまた別の場所に穴が空く可能性が高いため、丸ごと交換するケースが多いそうです。
茨城県下妻市の屋根工事の特性を尋ねました。茨城県は瓦屋根の多い地域で、愛知県(瓦の産地)からの瓦の仕入れが長年全国トップでした。しかし現在は、新築は金属屋根(ガルバリウム鋼板屋根)やコロニアルが好まれているそう。
「最近の新築は金属屋根が多いです。工期も短くなっていますね。でも一方で、この辺りの古い家は母屋があって長屋があって、車庫、蔵もあり、それら全ての屋根に瓦を使っているんですよ。農家さんの大きな家が多くて修理があるし、この辺りは瓦屋根の新築が減っているとはいえ、まだまだ瓦の需要がある地域です。瓦屋根の景色って綺麗なので、残せるならぜひ残していきたいとも思っています」
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MESSAGE
プロに依頼されるほどの技術と実績で住宅のお悩みを早期解決へ導き、お客さまを笑顔に
野村瓦店では、施工後の万が一の不具合には迅速に対応しています。お客さまの方で気になる箇所を見つけた場合はすぐに連絡をしてほしいとのことです。また、東日本大震災後はアフターフォローとして定期点検も行っていましたが、世代交代で震災当時の依頼主の方がいらっしゃらない場合も多く、点検については今後どのように行うか見直していきたいと考えています。
「東日本大震災の時は父と祖父がお客さまの家を修理してまわったんです。その時、屋根は大規模な災害がきて壊れてから初めて修理するもの、そういう家が多かったと聞きました。当時はかなり混乱していたので、全てのお客さまに対応できたわけではないんですが、修理したお客さまには3年、5年、10年の定期点検の案内を出したんです。ただ、世代が変わるとコミュニティにも変化があって、定期点検の案内を出しても以前よりはリアクションが少なくなってきました。祖父や父のお客さまと、私の代になってからのお客さまが違ってきているので、お客さまフォローをどうしていくべきかアップデートして更にお客さまに寄り添っていきたいですね」
最後に「やねいろは」をご覧になっている、雨漏りや屋根の劣化、雨樋修理でお困りのお客さま、そして屋根リフォームや屋根修理を検討しているお客さまへメッセージです。
「野村瓦店の強みは『職人から依頼される工事店』だということです。これまでもお客さまからの紹介はありましたが、5年ほど前と比べると最近はプロからの依頼が増えています。屋根以外にもできる仕事が増えてきて、同業者同士の繋がりも太くなってきて、それら全てが年輪のように会社の成長になっているのだと思います。それがお客さまの家のお悩みを早期解決できる力になっているので、工事をすることでお客さまを笑顔にする自信がついてきました。お気軽にお問い合わせください」
瓦の製造から始まり、創業100年が間近な野村瓦店。そして今は瓦屋根だけではなく、金属屋根や外壁、住宅の外装全般を手掛けられる工事店として成長しました。希少価値になりつつある和瓦の技術を保持している住宅工事店、古い住宅が多い地域に根差す工事店としてこれほど頼りになるものはありません。伝統の技術を磨きながらニーズに沿った新しい技術も取りに行く、どうかいつまでも前向きに欲張りであってほしいと、そう感じた取材でした。
(2024年9月取材)
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取材後記
有限会社野村瓦店
良い仕事は人との繋がりで生まれる
今回、野村さんにお話を伺い、何より印象的だったのは「経営者になってから困ったことはありましたか?」と質問をした時。「困ったこと……。なんだろう。いや、私、困ってないのかな!」と明るく答えるその姿に、野村瓦店の社風が表れていると思いました。瓦葺きが主だった野村瓦店が新しく金属屋根工事を始めた時、助けてくれたのは同業他社の仲間だったそう。それはきっと野村さんがそれまで積極的に周囲とコミュニケーションを取ってきたからですよね。仕事は「お互いさま」の連続なのだと改めて感じました。
一念発起で職人たちに課した新たな技術
「あの時板金を切るハサミを覚えてもらってよかった」
野村さんは過去を振り返り、こう語っていました。東日本大震災を機に茨城にも板金屋根が増え、その様子を肌で感じた野村さんは意を決して板金屋根の工事やカバー工法の仕事を受けるように。瓦葺きの職人さんたちは「なぜ今更板金?」と戸惑っていたそう。野村さんは「瓦より(重さが)軽いだろう」と前向きな言葉で職人さんを励まし、皆に技術を身に付けてもらったのです。経営者としての決心が功を奏し、今では板金屋根工事が自社売上の半分近くまで占めるようになりました。
職人さんに指示するのは時間厳守!
野村さんが職人さんたちに口酸っぱく言っているのは「時間を守る」ということだけ。野村瓦店の職人さんたちは社歴が皆長く、現場作業に関しては多くを言わなくても堅実な仕事をしてくれるといいます。しかし時間は同じ「5分」でも、受け取り方は人それぞれ。そしてその個人差ある感覚をカバーするのが「時間厳守」の行動だと野村さんは考えているのです。この話を聞いて、確かに…!と膝を打ちました。時間を守るというささいな行動ひとつで、信用って高まるものですよね。
外へ外へ出て、繋がりを深めた
「私、ホントに瓦屋なのか?ってくらい喋るでしょう」と野村さんは取材中終始明るく質問に答えてくださいました。この性分を活かし、四代目経営者となってからは商工会等に所属して外へ外へと出ていき同業者との繋がりを深めてきたのです。お客さまとのファーストコンタクトを大切にしているのも納得ですね。屋根工事はお客さまにとってはわからないことばかり。野村さんのような人が打ち合わせの席に来てくれたら、どんなに心強いだろうと感じました。
屋根修理・屋根リフォーム事例(有限会社野村瓦店)10件

屋根工事(取替)
S.M様 (茨城県常総市)
更新日 2024.03.13
before
after
- 建物種別
- 一戸建て
- 価格
- 10〜20万円
- 施工期間
- 0〜1日
一覧を見る
屋根工事のクチコミ評価(有限会社野村瓦店)2件
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工事店プロフィール(有限会社野村瓦店)
一番の強み |
家に対するお客さまの価値観を大切にしながら、伝統技術にも優れた職人が直に施工を行うところ |
会社名 |
有限会社野村瓦店 |
対応工事 |
|
従業員数 |
社員:3名 |
建設業許可 |
屋根工事業(茨城県知事許可(般-4)第29928号) |
保有資格者 |
一級かわらぶき技能士:2名
瓦屋根診断技士:2名
瓦屋根工事技士:2名
巻上げ機運転者:2名
石綿取扱作業従事者:1名
玉掛作業者:2名
ものづくりマイスター(かわらぶき):1名
木造建築物解体工事作業指揮者:1名
特定化学物質作業主任者:1名
建築物石綿含有建材調査者:1名 |
特徴 |
リフォーム業
瓦屋根工事業
金属屋根工事業
その他屋根工事業
雨樋工事業 |
対応エリア |
関東地方
|
アフターフォロー体制 |
全日本瓦工事業連盟の第三者賠償保険に加入しています。
施工後は無料定期点検のご案内を差し上げます。
それ以外の時期でも何かありましたらお気軽にお声掛けください。 |
やねいろはケア |
対応可 |
代表者 |
野村 尚仁 |
代表者経歴 |
有限会社野村瓦店 代表取締役
1998年3月:下妻市立千代川中学校 卒業
1998年4月:茨城県立下妻第二高等学校 入学
2001年3月:茨城県立下妻第二高等学校 卒業
2001年4月:矢野屋根工事店 入社
2001年4月:愛知県瓦高等職業訓練校 入学
2002年3月:愛知県瓦高等職業訓練校 卒業
2002年12月:矢野屋根工事店 退社
2003年1月:有限会社野村瓦店 入社
2018年9月:有限会社野村瓦店 代表取締役 就任 |
所在地 |
〒304-0802
茨城県下妻市鯨70
大きな地図で見る
|
営業時間 |
毎週月~金曜日 8:00~18:00 |
定休日 |
土曜日、日曜日、祝日、年末年始休業、大型連休(ゴールデンウィーク)、夏季休業(お盆休み) |